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2022.06.29 秘密基地をまた作りたくなる本『大人が作る秘密基地』 影山裕樹 著

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秘密基地をまた作りたくなる本『大人が作る秘密基地』 影山裕樹 著

子どものころは欲しいと思ったものを何でも自分でつくっていました。人気カードゲームを模したクラスメートだけのカードゲーム、資材置き場の片隅に拾い物で組み立てた秘密基地…。だけどいつからか自分で作ることを忘れて、誰か上手い人にお願いしたり、在り物でまかなったりばかり。それは自分の欲する場所や、住まいも同様です。

この本は日本各地で大人が自由な発想でつくった18の秘密基地を紹介しています。ツリーハウスや軽トラの荷台につくった小屋、商店街の空き店舗のコミュニティスペース、山奥の秘湯に愛好者たちが建てた掘っ立て小屋。不動産会社、建設会社の一員として熟練のプロによる連携で生まれる空間を誇り持って、迷いなくお勧めしていますが、同時にこのような秘密基地的な衝動も大切にしたいと思っています。

「秘密基地は、何よりも作る人の内的な必然性に貫かれていることが大切です。 ~中略~ 高知県にある沢田マンションや、ロサンゼルスにあるワッツ・タワー、郵便屋さんだったシュヴァルさんが創ったシュヴァル理想郷などなど。それらは、機能性や正統的な美術史に則った建築物や美術作品よりもずっと、内的な衝動に忠実だと思うのです。
私たちはみな大なり小なり心の中に秘密基地を持っているはずです。そして、その秘密基地を生産拠点として、想像力を補填して毎日を生きています。」
本書あとがきより引用

日々、お客様と接して一番大変であり、一番やりがいを感じるのは自身の中に明確に実現したい暮らしの像を持っている方との折衝です。在り物の住宅に自身を適合させるのではなく、先ずは私がどのような暮らしを実現したいのかをイメージしてから、秘密基地をつくるがごとく空間を肉付けしていく順番こそが、その人らしい暮らしを表現するステップではないでしょうか。もちろん本当の秘密基地ではなく、そこに様々な条件、予算などが関わってくるので妥協も必要でしょう。だけどその妥協もまた一段とクリエイティブなプロセスです。

 

『大人が作る秘密基地』
影山裕樹 著